アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎はどのような病気なのでしょうか

 アトピー性皮膚炎の原因は、まだ全て明らかにされていませんが、その発症にはアレルギー体質と皮膚のバリアー機能の低下が大きく関わっていると考えられています。アレルギーとは、多くの人にはなんの反応を示さない物質に対して、過剰に反応してしまう体質と考えてよいでしょう。アレルギーの原因としては、ホコリに含まれるダニ、皮膚の常在菌等が考えられています。食物が原因となっている場合はあまりないとされています。

どのような症状がでるのでしょうか。

 アトピー性皮膚炎の大きな特徴は、皮膚が乾燥しカサカサしていることです。またそれが進みますと、皮膚が角化し固くなってきます。さらに進行しますと皮膚に炎症症状が出てきます。皮膚の一部が赤くなり、痒みがみられ、そこを掻くようになります。首の周り、耳の周り、肘、膝に強く症状が現れます。掻き傷に感染が加わりますとさらに皮膚症状が悪化し、分泌物の増加、皮膚の亀裂、ただれがみられるようになります。

どのような治療をするのでしょうか。

 アトピー性皮膚炎はアレルギー体質と年齢が大きく関与した病気であるため、病気そのものをすぐに治すことはできませんが、10才頃には多くの患者さんは軽快します。病気の特徴として、治療しなくても症状が良くなったり、治療していても悪くなったりします。ですからアトピー性皮膚炎の治療は気長に、そして病気と仲良く暮らすように心がけることが大事です。治療には、環境整備、スキンケアー、軟膏療法、薬の内服療法があります。

日常生活における注意。

環境整備

 アトピー性皮膚炎はアレルギーが原因とされる疾患ですので、アレルギーの原因となるものを除去するようにしましょう。最も多い原因はダニとされています。ダニはタタミ、絨毯等の日常生活に必須のものに住みついています。ダニを100%取り除くことは事実上不可能ですし、またその必要もありません。悪い環境が症状を悪化させることは確かですが、環境要因を完全に取り除いても症状がなくなることはありません。可能な範囲でよいでしょう。

食事

 一部の人は食事が原因となっている場合があります。そのような人は、原因食物を除去した食事をとる必要があります。しかしそのような除去食を本当に必要とする人は極めて少数です。血液検査で陽性とされる食物としては、卵白、牛乳、大豆等が多いのですが、これらは成長発育にとても重要な栄養源であります。これらはむやみに制限しますと、日常の食生活に大きな障害、ひずみが生じ、栄養障害、成長障害、さらには情緒精神障害の原因にもなってきます。血液検査で陽性の食物を摂取しても症状は出ないことがほとんどです。食物除去は血液検査ではなく、負荷試験を行って実施します。

衣服

 アトピー性皮膚炎の人は肌がとても敏感です。直接肌に付ける物は刺激の少ない綿製品にしましょう。チクチク、ゴアゴアするものは避けましょう。洗濯の時には合成洗剤のすすぎ残しに十分な配慮が必要です。

スキンケアー

 スキンケアーの基本はお風呂に入り、固形石鹸で全身をよく洗うことです。古い皮脂成分やホコリが皮膚に付着しますと、それだけで皮膚に刺激となり、また細菌の感染の原因ともなり、アトピー性皮膚炎に悪い影響を与えます。毎日お風呂に入り皮膚を清潔に保つことはとても大切なことですが、入浴に関して気を付けなければならないことが三つあります。皮膚を傷つけないこと、刺激の少ない石鹸を使うこと、入浴後の保湿クリームを忘れないことです。あかすりや軽石、ブラシでゴシゴシこするのはやめましょう。柔らかいタオルを使うようにしましょう。液体セッケンの多くは皮膚に刺激を強く与えます。固形石鹸は刺激が少ないとされています。石鹸で体を洗うと、どうしても皮脂成分が過剰に失われますので保湿剤を塗ってください。保湿剤は種々の物が市販されています。香料や防腐剤が人によって合わないことがありますので、自分に合った物を選んでください。保湿剤としてはローション、ワセリンが推奨されます。

軟膏療法

 乾燥肌だけでしたら、スキンケアーと保湿剤で良いのですが、炎症が強くなってきますと、痒みが強くなりそれだけでは対応できなくなってきます。そのような時にはステロイド軟膏が必要になります。アトピー性皮膚炎にステロイド軟膏はとてもよく効きますので、ステロイド軟膏の使い方をよく理解して、上手に使うようにしましょう。そのためにはステロイド軟膏の副作用を良く知る必要があります。ステロイド軟膏で問題となる副作用は、感染を増悪させること、長期連用で皮膚の萎縮や色素沈着をきたすことです。アトピー性皮膚炎には感染が加わっている場合が少なくありません。発赤が強いとき、痛みがあるとき、分泌物が多いときは感染が加わっている可能性が強いですから、その部位にステロイド軟膏は塗らずに、抗生剤入りの軟膏を塗ってください。長期間連用すると皮膚が萎縮して固くなったり、色素沈着ができシミになったりします。顔に出やすい副作用ですので、顔にステロイド軟膏を用いる場合は医師と相談してからにしましょう。ステロイド軟膏は数週間程度の短期間の連用でしたらほとんど問題ありません。長期連用にならないためには、自分で基準を作り、どのレベルまでならステロイド軟膏なしですむかを決めることが大事です。定期的に医師の診察を受けると良いでしょう。

内服剤

 抗ヒスタミン剤と呼ばれる薬は痒みを抑える効果があることから使用されます。しかしその効果は個人差があり、全ての人に有効ではありせん効果を見極めたうえで選択することが肝要です。

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