軽度発達障害

 

 軽度発達障害は小児科領域の精神神経疾患としてより、教育現場、社会生活における不適応としての問題が多い疾患群です。軽度発達障害という用語は医学、教育、心理の領域において正式に定められたものではありませんが、わが国でこの数年広まった用語です。軽度という表現から、問題が軽いとイメージされることから、必ずしも適切な用語ではありませんが、わが国ではよく使用されています。注目されている主な理由は、行動面の問題が多く保育園、学校で対応にしばしば苦慮する事態になることです。発達障害であるあることが、周囲もまた親自身も気付きにくく、児の性格や親の育て方の問題とされ、結果として不適切な対応がなされます。適切な対応により正常な社会生活に適応できる可能性が高いだけに、多面的、多角的な対応が求められます。

 

軽度発達障害の分類

 

(1)高機能広汎性発達障害

   1.高機能自閉症自閉症

   2.アスペルガー症候群

(2)発達の部分障害(特異的発達障害)

   1.学習障害

   2.発達言語障害

   3.発達性協調運動障害

(3)注意欠陥、多動性障害

(4)境界知能(軽度知能障害)

 

 軽度発達障害とは、知能障害がなく、偏りや歪みの問題を中心とするもので、発達障害が軽いという意味ではありません。一般に発達障害の表現型としては、遅れ、偏り、歪みの三つがあります。遅れは同年令の子供の大多数ができることができない、偏りは通常の子供に見られる行動ではあるが、その程度が通常範囲をこえている(生活上で支障をきたしている)、歪みは通常の子供には見られない行動を指します。遅れの代表は知的発達障害、偏りの代表は注意欠陥・多動性障害、歪みの代表は自閉症です。

 自閉症、高機能自閉症自閉症、アスペルガー症候群はそれぞれ独立した疾患ではなく、連続性のある自閉症スペクトラムとしてとらえられています。社会性の欠如,コミュニケーションの障害,思考の柔軟性の乏しさという3要素が自閉症の共通しています。そのうちで、極端な孤立と同一性の保持の強いものを自閉症、アスペルガー症候群は自閉症連続体のうちで能力の高い方の端に位置する障害と考えられています。アスペルガー症候群の生徒は(大多数が男子です),知能の点では平均,あるいは優秀であり,単純記憶は優れています。自分が興味を持つことにはのめり込むので,その分野で後々大きな業績をあげることもあります。

 聞く、話す、読む、書く、計算する、推論することのうち一つ以上の障害を学習障害と言います。聞く話す事の障害は発達性言語障害として別に分類されます。発達性協調運動障害とは身体運動の困難を指します。それは大きく分けて粗大運動の困難と微細(巧緻)運動の 困難に分けられます。粗大運動とは全身運動のことで、走るなどの運動を指します。微細運動とは細かい運動のことで、手先の器用さを要求される活動などがこれに含まれます。

 境界知能は、知能指数が71〜84の子供達で、遅れているとも正常範囲とも言えない状態です。多くは問題はないのですが、時に問題行動が見られ、特別な配慮を必要とします。

 

治療および予後

 

 治療の基本は、環境調節と精神療法、一部薬物療法が加わります。これらは発達の障害ではありますが、発達が停止しているわけではなく、適切な対応により社会に適応できる発達を導く事は可能です。しかし集団生活の中では変わった子、自分勝手な子として扱われることが多く、虐めの対象になり易い傾向があります。集団生活の中でさらに不適応の悪循環に陥ることもあります。成人後も社会にうまく適応できないこともありますが、うまく社会に適応している場合がほとんどです。黒柳徹子さんはその著書、窓際のトットちゃんで、自分を受け入れてくれた学校の校長先生に感謝し、その気持ちを伝えたくて本を書いたと著しています。本の記述から彼女は典型的な注意欠陥、多動性障害であることがわかります。今でも見方によれば彼女は変わった女性ともとれますが、同時に魅力的な得難い個性です。いかに周囲の受け入れ体制が重要かを教えています。

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