熱性けいれんのお話

熱性けいれんとは

 乳幼児期(生後6ヶ月から4〜5才まで)には、発熱時にけいれん(熱性けいれん)を起こすことがたびたびあります。全身を硬直させたり、手足を同時に屈曲させたりします。眼球は上転するか、一点を凝視し動かしません。この間は意識がなく、ものを見ることはできません。発熱時に観られる悪寒戦慄は手足をぴくぴくさせる点でよく似ていますが、このときはものを目で追ったり声を出したり、呼びかけに反応しますので熱性けいれんとの区別は容易です。数分間けいれんは持続し、自然に止まります。そのあとしばらく寝ます。けいれんの間はほとんど呼吸をしないため顔はみるみる蒼白となり、見ているのが辛くなるほどの重症感を持ちますが、予後は極めて良好であり、後に障害を残すことはほとんどありません。熱性けんれんの多くは家族性、遺伝性のもので、5%の人に見られる頻度の多いものです。多くの人は一回で終わりますが、2割ぐらいの人は2回、3回と繰り返えします。予後の悪い熱性けいれんも頻度は少ないですがあります。生下時より明らかな中枢神経の障害がある場合、けいれんに明らかな左右差がある場合、持続時間が10分以上の場合、けいれん後麻痺が出現する場合が上げられます。発熱時にけいれんが見られる疾患に脳炎や細菌性髄膜炎があります。これらの疾患は放置しますと命を奪われることもある重症疾患ですので、その鑑別は重要です。鑑別点は多くありますが重要なのは、けいれん後の意識障害の有無です。熱生けいれんも、その直後数十分は寝たり、ボッーとしてますが少なくとも一時間以内に意識は正常に戻ります。けいれん後1時間の観察がとても大事です。

 

けいれんにはどのように対処したらよいのでしょうか

 けいれんを起こしますとみるみる顔色が悪くなり、死んでしまうのではないかと気が動転してしまします。熱生けいれんは予後の極めて良好な疾患ですので心配はいりません、冷静に観察し必要な対応をするようにしましょう。けいれんは長く感じるものですが実際は1分前後で終わります。まず時間を見るようにしましょう。けんれんの最中はほとんどが口を固く閉じていますので、無理に口の中にものを入れないようにしましょう。無理に口を開きものを入れますと気道を圧迫しかえって危険です。けいれん中最も危険なことは、けいれん中に嘔吐をし、吐物を気管に詰まらせることです。けいれんが起きたら体を横に向け、顎を上に向けます。口を下向きにし嘔吐しても外にでるようなポジションを取らせます。

 

熱生けいれんの予防

 1ないし2回の熱生けいれんでは特に予防の必要はありません。予後の悪いタイプのもの、4回、5回と頻度の多い場合抗けいれん薬(ダイアップ座薬)を使用します。熱生けいれんは体温が急激に上昇するときに起きやすいので37.5℃前後の発熱に気づいた時には、できるだけ速やかにダイアップ座薬を1ヶ肛門内に挿入して下さい。38℃以上の発熱が続く場合には、8時間後にもう一度だけ座薬を挿入して下さい。熱生けいれんは発熱後24時間以内に起きそれ以降は起こすことはありませんので、2回目挿入後は、さらに発熱が持続しても、それ以上座薬を使用する必要はありません。

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